一方、里親募集サイトに出されているペットたちにもさまざまな背景、「やむを得ない事情」があります。

やむを得ない(止むを得ない)

他に方法がないこと。しかたがないこと。

こうした事情を事前に知らせることができれば家族に捨てられる悲しいペットたちを減らせるかもしれません。 今回は里親募集サイト「ジモティー」に掲載された募集200件からさまざまな「やむを得ない事情」をご紹介します。

飼い主やその家族の予期せぬ病気

やむを得ない事情としてもっとも多かったのが、200件中38件を占めた、

  • 入院(療養)により世話ができなくなった
  • 配偶者・こどもがアレルギーになった

など、病気により飼育できなくないやむを得ず手放すというもの。

犬や猫たちの寿命が10年以上ともなれば、こうした事態も十分に起こりえます。 ペットを飼う方は健康に気をつけるのはもちろん、ご家族の方ともよく話し合ってあらゆる懸念を取り除いてから飼育をはじめましょう。

就職や出張、急な引っ越し

18件と大きく開いて次に多かったのが、

  • 急な引っ越しにより飼育できなくなった
  • 就職のため上京することになり、ペット可のマンションに住めない
  • 家を引き払うことになり、新居がペット不可だった

など、引っ越しによりペットが飼えなくなったというもの。

病気もそうですが、「10年後の自分は何をしているだろう?」と考えてみても、正確に予想するのはとても難しいことです。 つまり「ペットを飼う」ということはとても難しいこと。 見越せないほどの将来をそれでも見越して、どんな状況でも必ず添い遂げるという気持ちで挑んでください。

望まぬ繁殖

11件と意外と多かったのが、

  • 去勢・避妊前に繁殖してしまった
  • 家から脱走したわずかな時間で妊娠した

などの予期せぬ妊娠・繁殖によるもの。

信じられないのが「1匹だけ欲しいから繁殖させたが複数は飼えないため」という身勝手なものもありました。 飼育できないなら室内飼育か室外飼育に関わらず去勢・避妊を徹底しましょう。

先住ペットと相性が悪い

「望まぬ繁殖」と僅差の10件だったのは「もともと飼っているペットと相性が悪いため」というもの。

人間ですら相手によって同じ屋根の下での生活は難しい場合もあるでしょう。 ペットたち相手に事前の相談ができない以上、複数飼育で望まぬ同居生活を強いられるのはペットたちの方です。 それをやってのけようとする以上、どんな状態でも治められる自信と裏付けとなる努力は避けられません。

人間の勝手で同じ環境に閉じ込められ、それが手に余るとなるや否や捨てられてしまうペットたちを思うとあまりにいたたまれません。

飼い主の高齢化

こちらも僅差の9件、

  • 飼い主が老人ホームにいくため
  • 飼い主が亡くなったため

など、高齢化の進む現代日本では無視できない問題。

一方、ペットたちの平均寿命と購入時の年齢を逆算するだけで本来容易に避けられる問題でもあります。 高齢にも関わらずペットを飼わずにはいられない場合は、必ず責任を持ってペットを引き取ってくれる新しい飼い主を見つけておきましょう。

しつけができない

信じられないことに6件もの募集があったのが、

  • こどもを噛んだため
  • フン害を近所に咎められたため
  • 暴れて手がつけられないため

など、しつけに関するもの。

ペットの不出来を嘆くようなものが多い印象ですが、しつけができないのは間違いなく飼い主の責任です。

もちろん、動物のしつけは専門知識の求められるものですので、誰にでもできるものではありません。 そのような場合はしつけ教室に通うなど、専門家に助けを求めることも視野に入れなくてはなりません。 当然それなりに費用の掛かるものではありますが、本来ペットの飼育は金銭的余裕のある環境にのみ許される娯楽ともいえます。

ペットを飼われる方はそういった出費も覚悟する必要があります。

ブリーダーを引退するため

6件もの募集があったのが専門家にあるまじき、

  • ブリーダーを引退するため
  • 増えすぎたペットの整理のため
  • 高齢で出産できなくなったため

など、ブリーダーによるブリーディングに関するもの。

ペット先進国でペットショップ(生体販売)が衰退しているのは、このように動物たちを商品としてみていると次第に感覚が麻痺して「物」同然の扱いとなってしまうためともいわれています。 仕事として取り組む以上、利益を追求することからは逃れられません。 そうした人間本位の都合で犠牲となる動物が少しでも減ることを願ってやみません。

妊娠・出産のため

思いの外少なく5件だったのが、

  • 妊娠により飼育が難しくなった
  • 出産のためペットが飼えなくなった

など、妊娠・出産に関するもの。

過去ペトラでも、妊婦が猫と付き合う上で考えたい「トキソプラズマ」についてペットと赤ちゃんの付き合い方についてなど取り上げてきました。

妊娠も出産も、本来とてもおめでたいことです。 ですが、その慶事がペットたちの犠牲の上に成り立つものなら手放しには喜べません。

ペットを飼っていて妊娠の予定がある場合は事前にしっかりパートナーと相談し、必要な知識を蓄えた上で動物たちと向き合っていけるようにしたいですね。

経済的な理由

200件中2件あったのが、

  • 職を失いペットを飼育していく余裕がなくなった
  • 金銭的な余裕を失い、飼育できなくなった

など、経済的な理由によるもの。

高齢化同様、不況の続く日本では他人事とはいえない問題です。 自分自身が困窮しているなか里親を探す行いは立派ですが、やはり「ペットを飼う」ということはある種金銭的な余裕あってのもの。 経済的な負担が大きい場合、ペットは飼わない勇気も必要です。

捨てられていたが飼えない

これまでの「やむを得ぬ事情」すべてを合計して200件中105件。 そして、残る95件がこの「保護したペットを引き取って欲しい」というものでした。

つまり、約半数が次の引き取り手を探しもせず、言い訳をすることさえなく気軽に飼育放棄されたものの尻拭いをさせられた募集だったのです。

これまでの里親募集は自分本位でこそあるものの、少なくとも多少の手間暇をかけて次の飼い主を見つけようと里親募集が出されていました。 ところが、こうして里親募集さえせずに捨てられると、通常自然環境に適応できずに死んでしまうのはもちろん、生き残っても繁殖によって二次被害がでる可能性もあります

一部で「ペットの飼育を免許制にしていはどうか」というような声が上がっているそうですが、思わず同意してしまいたくなる現実という他ありません。

止むを得ない事情にみるペット飼育の資格まとめ

さて、ご紹介したさまざまな飼育放棄の「やむを得ぬ事情」、いかがでしょうか? これまでの事情を総合すると、

  • 今後最低10年間、健康でいられるか? または健康を損なった際の蓄えはあるか?
  • 今後最低10年間、飼育環境を維持できるか?
  • 今後最低10年間、しつけのために時間とお金を惜しまず向き合えるか?
  • その動物が持てる力のすべてで自分に襲いかかってきても変わらず愛せるか?
  • 他に飼っている動物はいないか?
  • 去勢・避妊はしたか?

のような自問自答を経て飼育を開始すると約半数の確率で飼育放棄をしない飼い主になれるといえるでしょう。

正直に申し上げるとかなり難しい条件だと思いますが、命を育てるというのは難しくて当然なのです。 難しいことに無理に挑まず、ペットを飼育せずに生きていくという選択も時には尊いものとなります。

この記事をきっかけに、悲しい不幸を背負うペットたちが1匹でも減ることを心から祈っています。

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