尿路結石症とは、腎臓、膀胱、尿管、尿道の中などで特定の物質が結晶化し、「結石」ができる病気のことで結石の大きさは数ミリから数センチになるものまでさまざま。 「F.L.U.T.D.」と称される「猫下部尿路疾患」の代表的な病気で、膀胱や尿道を傷つけたり、尿道に詰まってしまうこともあり、当然激痛を伴います。

代表的な尿路結石として有名なのは、尿のpH値がアルカリ性に傾くことで起こりやすい「ストルバイト結石症(リン酸アンモニウムマグネシウム)」と、逆に酸性に傾くことで起こりやすい「シュウ酸カルシウム結石症」で、この二つで尿路結石症全体の約80%以上を占めているのだとか。

では、さっそく原因と対策をご紹介していきましょう。

尿路結石症の原因とは?

原因はおおまかに二つあります。 ひとつは冒頭で触れたとおり、体内の尿のpH値が酸性やアルカリ性に傾いてしまうこと。 そしてもうひとつは、pH値が傾いた際に影響を受ける「結石のもと」が体内に増えてしまうことです。

さらに詳しくご説明してきましょう。

体内のpH値とは?

体内のpH値は、人も犬も猫も同じで主に「毎日の食生活」で決まります。 それぞれ個体差はありますが、

  • 「野菜」を食べるとpH値は上がる(アルカリ性に傾く)
  • 「肉」や「魚」を食べるとpH値は下がる(酸性に傾く)

と言われています。 猫は肉食のため、通常の「総合栄養食」のキャットフードだけを与えていた場合はほとんど問題ありませんが、手作り食やおやつなどを与えている場合は注意しましょう。

ただし、原因はそれだけではありません。

pH値が傾く原因は?

通常、猫の尿のpH値はpH6.0~6.4(弱酸性~中性)程度。 先述のように毎日の食生活が基本となりますが、その他さまざまな要因でpH値は傾いてしまいます。

いっきにたくさん食べると……

食事をすると、消化のために胃酸が分泌されます。 身体は胃酸を作るために体中の「酸」を胃に集中させるため、その時つくられる尿では酸が不足。

結果として尿はアルカリ性に傾いてしまい、結石のできやすい環境になってしまいます。

対策としては、食事は小分けにして与えること。 生活のリズムにもよりますが、少しずつ朝と夜の二回に分けるのが良いといわれています。

猫の体内に蓄積される「結石のもと」

当然といえば当然なのですが、原因となる物質さえなければpH値のゆらぎで結石ができることもありません。

そして、意外と知られていない結石のもととなる物質は、マグネシウムやカルシウムなどの「ミネラル」です。 マグネシウムが「ストルバイト結石症」を、カルシウムが「シュウ酸カルシウム結石症」それぞれを引き起こします。

もちろんミネラルは五大栄養素のひとつで、生きていく上で欠かせないものではありますが、これらを摂り過ぎてしまったり体内でのバランスが崩れてしまうと「結石」となってしまいます。

pH値のゆらぎは尿の濃縮

水分をあまり摂らずにいると、尿の頻度が少なくなります。 そうすると、体内で尿が濃縮され、尿に含まれるミネラルも濃くなってしまうため結石ができやすくなります。

もともと猫は乾燥した熱帯地域である北アフリカの「リビアヤマネコ」を祖先に持つ生き物といわれていて、あまり水分を摂らなくても生きていける身体にできています。 犬より結石症が多いのはこのためで、特に冬場は水を飲む頻度が減るためウェットフードを与えるなどで対応してあげてください。

また、下痢をしてしまうと水分が取られてしまうため、消化の悪い食べ物などは避けてあげてくださいね。

その他の原因も

肥満気味の猫は運動量が減ることでさらに水を飲まなくなったり、脂肪で尿道が狭くなってしまい、結石になりやすい傾向があります。 また、「膀胱炎」などを起こすと細菌によってpH値がアルカリ性に傾くため、結石の原因になりやすいと言われています。

また、メスよりオスの猫のほうが結石になりやすいのも特徴です。 メスに比べてオスの尿道は細長くカーブがあり、かつ先端が細くなっているためで、さらに結石が尿道に詰まりやすく重症化しやすい傾向にあるそうです。

ミネラルといえばミネラルウォーター

「ミネラル」と聞いてミネラルウォーターを連想した人も多いはず。 では、「犬や猫にミネラルウォーターは危険」という話を聞いたことはあるでしょうか? 実はこれ、半分正解で、半分間違いです。

水には「硬度」という「ミネラルの含有量」を表す指標があって、ミネラルをたくさん含むものが「硬水」、ミネラルの少ないものが「軟水」と呼ばれています。 つまり、犬や猫に与えてはいけないのは「硬水」なのですが、日本国内で販売されているミネラルウォーターの大半が「軟水」。 これは日本人が古くから軟水を好むためで、「海外で食べた白米がまずかった」というような逸話の影には硬水が影響しているケースも珍しくありません。

そしてさらに知られていないのが「日本の水道水は地域によって中硬水」ということ。 国内で流通しているミネラルウォーターの大半が「軟水」であることにより、実はほとんどの地域では水道水のほうがミネラルが多いんです。

もちろん、少ないとはいえ「硬水」のミネラルウォーターもありますので、硬度を確認した上で選んであげてくださいね。

尿路結石症の症状は?

結石症を患うと、

  • 頻尿
  • 頻繁に尿をしたがるが少しずつしか出ない
  • 長時間トイレでうずくまっている
  • 血尿
  • トイレ以外の場所で尿をする
  • 落ち着きがない

などの症状が現れます。

特に、

  • 排尿時に痛がって鳴く
  • 尿が全く出ない
  • 下腹部がパンパンに膨らんでいる

のような場合は緊急事態です。 尿道に結石が詰まってしまうと、尿が出なくなる「尿道閉塞」という状態となり、二日以上そのままだと「尿毒症」によって命に関わる危険な状態になります。

尿路結石症の治療方法は?

軽度であれば、結石を溶かすための薬や療法食での治療ですが、膀胱や腎臓に大きめの結石ができてしまった場合は、手術で取り除くことがあります。 結石が尿道に詰まってしまい尿が出せなくなってしまった場合は、尿道口からカテーテルを入れ、詰まっている結石を流し出さなければなりません。

それでも詰まった結石が取れなかったり、再発を繰り返すオスの場合は、尿道を短くする整形手術を行うこともあります。

尿路結石症の予防は?

尿路結石症は再発しやすい病気のため、おうちでの予防が大切です。

まず、なにより水を飲ませること。 すでに結石症を患ってしまっている猫の場合は、できるだけ硬度の低い(ミネラルの少ない)水を与えてあげてください。 キャットフードについても結石症用の「pHコントロール」を目的としたものが販売されています。

また、適度な運動をさせることで水を飲むようになったり、肥満防止にもなるため一石二鳥です。

最後に、猫に排泄を我慢させないこと。 猫は犬以上にきれい好きなので、トイレは常に清潔に保ってあげてください。 一般的な目安として「猫一匹につきトイレふたつ」と言われています。

愛猫を尿路結石症から守れるのは飼い主だけ!

以前お伝えした内容はやや犬寄りだったため、今回は猫にスポットを当ててお伝えしました。

結石は治すのが難しく、再発の多い病気です。 疑わしい症状がみられた場合は、すぐに動物病院へ連れて行ってあげてくださいね。

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