1986年、日本動物病院協会(現公益社団法人日本動物病院福祉協会)が、人と動物のふれあい活動(CAPP)を始めた頃にはあまり浸透せず、短く覚えやすい「ペット」という言葉が普及しました。

しかし、日本にも動物愛護の精神が広がり、一般の飼い主さんの中でも「ペット」ではなく「家族」という意識をもった方が増えたことで「コンパニオンアニマル」という言葉が再び注目を集めています。

日本のペットたちと人々

私たちが普段何気なく使っている「ペット」という言葉は、犬、猫、鳥、魚など、人と共に暮らす動物全般のことを指します。

一方、人と長い歴史を共に暮らしてきた身近な動物を、伴侶、家族、友達、仲間と同様に位置づけ、「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」とする考え方自体は1986年頃からありました。

コンパニオンアニマルの条件は、

  • 人の身近で長い歴史を歩んできた動物
  • その動物の習性、行動が解明されていて、しつけができる
  • 人と動物との共通の感染症が解明されている
  • 人と暮らすことにより幸せを得ることができる
  • 家族として正しい医療が受けられる

などが挙げられ、代表的な動物は犬と猫です。

ペットが一方向な愛情の対象ではなく、話し相手や相談相手として心が通じ合う対象という考えから、使われるようになった言葉です。

もちろん、ペットが人の言葉を理解し、返事をすることはありません。 しかし、動物たちが動物たちなりの「答え」返してくれるということは、動物と暮らす人なら誰もが経験していることではないでしょうか。

動物たちは人の生活の変化に伴い、その存在意義、価値、役割を変えながら、社会の中で見直され、家族の一員、社会の一員と位置づけられるようになりました。 家族の一員だからこそ、飼い主は健康管理、しつけ、ペットの生涯の幸せを見守り、責任を持たなければなりません。

また、動物たちは人の教育、福祉、健康の面でも大きな役割を果たしています。 聴導犬、盲導犬、介護犬など、補助犬として働く犬たちはもちろん、飼い主と共に高齢者施設、ホスピス、病院、学校などを訪問する犬や猫も増えています。

「コンパニオンアニマル」論の生い立ちは?

コンパニオンアニマルの発祥は、英オックスフォード大学の研究者が「ペットという言葉を使用すること自体が不適切ではないか」という論説を動物倫理学の専門誌「Journal of Animal Ethics(ジャーナル・オブ・アニマル・エシックス)」に発表したことから。

それを承けて「Journal of Animal Ethics」の編集者、オックスフォード大学のアンドリュー・リンジー教授は、「ペット」という言葉、「飼い主」という言葉を侮辱的な言葉とし、軽蔑するような言葉が使われることで動物の扱われ方に影響を及ぼすとして「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」と「世話をする人」という言葉に置き換えるべきだと主張しています。

例えば、「ペット」という言葉を人に対しても使うと主従関係を意味し、いい意味とは捉えない人がほとんどでしょう。 しかし、「コンパニオンアニマル」という言葉であれば、共生する動物との対等な関係を印象づけられるためより適切です。 また、「飼い主」という言葉は、道徳的な扱いが制約されない資産や機械などの物に対して使うものであり、命ある動物に向ける言葉ではない、というのが彼の主張です。

同時に彼は「野生動物」という言葉も「自由に生きるもの」という言葉に置き換えることを提案しています。 野生動物という言葉は、野蛮、乱暴という意味が含まれているからです。

また、キツネのようにずる賢い、ブタのように食べるといった、形容詞的に動物を使う言葉も、動物に対して誤ったイメージを抱く恐れがあると指摘しています。

コンパニオンアニマルのこれから

みなさんがもつ「ペット」という言葉のイメージはどうでしょうか? 自分の愛犬を「ペット」と呼ばれることについてどう思いますか? 知り合いの犬、見知らぬ犬に対してはどうですか? ペットという言葉は侮辱的だと感じますか?

個人的には、どんな言葉で呼ばれようと、動物たちが私たちと対等な家族であることに変わりはありません。 「コンパニオンアニマル」という呼び方、風潮にもどこか言葉遊びのような印象もありますし、どこか不明瞭かつ人間本位な「コンパニオンアニマルの条件」にも疑問が残ります。

しかし、ただ呼び方を変えるだけで動物虐待に走るような人や、動物たちを商品としか見ないような人たちへの牽制になるのであれば、広まって欲しいかも知れません。

「○○ちゃんの飼い主さん」ではなく、「○○ちゃんのパパ、ママ」という言葉が使われるのも、「飼っている人、飼われている犬」という構図を無意識のうちに感じ、避けているからかも知れないですね。

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