人間にとって「水」は身体中の細胞を満たす、重要な役割を担う大切なもの。 これは人間だけでなく、犬や猫にとっても同じです。
極端にいえば、水さえ飲めれば2~3週間は生きられますが、水分を全くとらないと4~5日程度で脱水症状を起こし、命の危機にさらされてしまいます。
そんな生命に欠かせない「水」について、今回は考えてみます。
犬や猫などのペットにとって理想的な水は硬度の低い「軟水」。 硬度の高い硬水や中硬水などのミネラルウォーターではミネラルを摂りすぎてしまい、かえって不健康な症状を引き起こしてしまいます。
では、水道水がいいのかと思われるかも知れませんが、実は水道水も一部の地域では中硬水。 さらに、水道水には塩素やトリハロメタンという発がん性物質の不安もあるため、軟水のミネラルウォーターがもっともおすすめです。
ただし、ペットにミネラルウォーターを与えることについて、世間ではなかなか否定的です。 主に聞こえてくるのは、
というようなもの。
ひとつひとつ解明していきましょう。
犬や猫の結石症の8割以上を占める「ストルバイト結石症」と「シュウ酸カルシウム結石症」。 いずれも原因となるのは「マグネシウム」や「カルシウム」などの「ミネラル」と言われています。
ミネラルというと、そのものずばりミネラルを名前に冠した「ミネラルウォーター」は危険と思われがちですが、実はこのミネラルは水道水にも含まれています。
さらに、水道水のミネラル量は日本各地の水道局により調整されていますが、広い範囲をカバーするが故に常に一定とはいきません。
その上、マンションなどでは水道局とご家庭の蛇口の間にマンションの管理する「貯水槽」を挟むことも多く、貯水槽の清掃は法的には「最低二年に一度」としか定められていないためやや不安の残るところです。
一方、市販されているミネラルウォーターは法律によりミネラル量を明記するよう定められています。 また、昔から日本人はミネラル量の少ない「軟水」を好むため、国内で流通しているミネラルウォーターのほとんどが軟水。
当然、硬水のミネラルウォーターもまったくないわけではないので注意が必要ですが、軟水のミネラルウォーターを選ぶことさえできれば水道水以上の安全を手に入れることができます。
犬や猫が水によって下痢をしてしまったらまず疑うべきは「マグネシウム」。 マグネシウムは人間の「便秘薬」にも使われている成分です。
マグネシウムはミネラルの一種で、ミネラルウォーターや水道水にも含まれています。 そして、先述のとおり水道水のミネラル含有量は地域ごとにばらつきがあり、さらには季節や雨量などによっても微妙に変動します。
もし水を変えたタイミングなどで「便がゆるくなったかな?」と感じた場合、ミネラル含有量の不明瞭な水道水よりも、商品によってミネラル含有量を選択できるミネラルウォーターがおすすめです。
ミネラルウォーターを与える上で注意したいポイントは主にふたつあります。
ミネラルウォーターは水道水のように「塩素」での消毒がされていません。 「トリハロメタン」のような発がん性物質を含む心配がない一方で、長期的な置き水などにはやや不向きかも知れません。
未開封の状態であれば1年以上もつものがほとんどですが、一度開封して空気に触れた場合は早めに使い切る必要があります。
人間用に販売されているミネラルウォーターは冷蔵庫で冷やされている場合がほとんど。 犬や猫に与えるには常温が望ましいため、このまま与えないよう注意してください。 冷たすぎる水を与えてしまうと、下痢の原因になったり、逆に便秘になってしまうこともあります。
この場合、室内に放置して常温になるまで置くのももちろん良いのですが、ウォーターサーバーのような設備がある場合はミネラルウォーターの「お湯」を混ぜて常温程度まで調整してあげるといいでしょう。
一見、高価に思われがちなウォーターサーバーですが、その費用は本体のレンタル料金も含めて2,000~3,000円以内に収まる場合がほとんどのため、ペットのいるご家庭には断然ウォーターサーバーがおすすめです。
「ペットにミネラルウォーターを与えてはいけない」というのはある意味では正しく、ある意味では間違っています。
これらの知識を持ってみると、必ずしもミネラルウォーターは危険ではなく、必ずしも水道水が安全でないこともおわかりいただけるのではないでしょうか。
何が安全で何が危険か、こと食べ物や飲み物に関してその常識は常に変わりゆくもの。 その時その時で正しい情報を集め、常に愛犬、愛猫のためになるようしっかり選択していきたいですね。