2018年春頃、アース・バイオケミカル株式会社から販売されている「薬用アースサンスポット」を使った猫が体調不良になる例が次々と報告されています。

なぜ安全なはずの薬で体調を崩してしまったのか、被害を広げないためにはどうすればいいのか、考えられる原因と対処法をご紹介します

サンスポットはどんな薬?

「サンスポット」とは猫用のノミ取り剤で、ノミとダニの駆除、蚊を寄せつけない、といった効果を謳っています。

液状の薬を背中に付けるタイプのノミ取り剤で、獣医師の診察がなくてもホームセンターやネットなどで簡単に購入できるものです。 農林水産省によって安全性が認められた動物用医薬部外品です。

報告されている症状

SNSや通販サイトのレビューでは次のような報告が多数寄せられています。

  • 背中をピクピクさせる
  • 目が爛々として落ち着かない
  • 皮膚がごっそり抜ける
  • 皮膚が赤くなる
  • 食欲不振
  • 全身の震え
  • 飛び上がれなくなる

自分の猫がそうだったら……、と考えると身震いするものばかりです。

これらの報告を受けたアース・ペット株式会社は急遽アンケートを行い、『「アースサンスポット(猫用)」に関するアンケート結果について』として発表しました。 アンケートの中では新たに、

  • 元気がなくなる
  • 滴下したところを舐めようとする
  • 嘔吐する
  • ひどく毛が抜ける
  • 通常と異なる行動をする
  • ひどく痒がる
  • ひどく興奮する
  • 皮膚が赤くなる

のような症状の報告があったとし、

皆様のお声を今後の販売並びに製品改善、商品開発、啓発活動に実現させるべく、検討を行っております。 弊社の検討結果、改善策につきましては、2018年12月17日(月)までにご報告させていただきます。

としています。 インターネット上に履歴の残りにくいPDFファイルという形なのが気になりますが、比較的真摯な対応といえるのではないでしょうか。

異常の原因は? 殺虫成分「フェノトリン」とは?

今回、猫を体調不良にさせた原因は何でしょうか。

気になるのが、サンスポットの有効成分として記載のある殺虫成分「フェノトリン」。

フェノトリンとは人のアタマジラミ予防などにも使われ、身近なものだと「バルサン」にも含まれる物質ですが、過去アメリカでもフェノトリンの含まれたノミ取り剤で大量の猫に異常をきたす事件がありました。 数千件の被害報告をもたらしたこの事件は、後の調査で「フェノトリンを誤って舐めたこと」が原因として明らかになり、商品の販売会社に改善命令が出され、商品の回収、危険性に関する呼びかけ、ペット用品店や獣医師への情報開示まで及ぶ一大事件に発展しています。

すでにアメリカで同様の事件が起きていたことには驚きですが、その成分が日本で認可されていることにはさらに驚きです。

サンスポットを使ってしまったら?

このサンスポットをうっかり猫ちゃんに使ってしまった場合、まず塗ったところを濡らしたタオルでよく拭いてください。 猫ちゃんがパニックになって暴れる可能性もあるので、その時は落ち着くのを待ってからでも構いません。

応急処置がすんだらできるだけ速やかに動物病院へと連れて行きましょう。 一件、平気そうにしていても猫は体調不良を隠すもの

必ず飼い主さんが気にかけてあげましょう。

危険な成分から愛猫を守るために

愛猫を守るためには、飼い主の皆さんがしっかりと知識を備えて薬を選ぶことが大切です。 多くの薬は、箱の裏面に薬の成分が表示されています。

今回の件やアメリカの中毒事件を考えると、フェノトリンを含んだ薬は避けた方がいいでしょう。 ノミ・ダニ取り剤だけでなく、シャンプー剤にも含まれている場合もあるので注意が必要です。

とはいえ、こういった薬に含まれる成分は実に多種多様。 どれだけしっかり勉強をしていても、すべての成分を熟知することは難しく、まだ発見されていない問題が見つかるかもしれません。

そんな中でも猫ちゃんを安全かつ確実にノミやダニから守るためには、動物病院で購入できる薬を使うことをおすすめします。

確かに、ホームセンターやインターネットで買える薬は安くて手軽ですが、動物病院で買える薬とは成分から違う場合がほとんどです。 動物病院で買った薬で万が一体調を崩しても、すぐ獣医師に相談できることもメリットの一つです。

猫のノミ取り剤で体調を崩してしまったら

今回はフェノトリンという物質の危険性をお伝えしましたが、猫によっては別の物質でも体の反応が出てしまう場合があります。 多くのノミ取り剤には注意書きとして、「初めて使用する場合は少量滴下して様子をみる」「体調の優れない場合は使用しない」などの表示があります。

たとえ獣医師に処方された薬であってもそれらの注意書きを見落とさず、飼い主が危機管理を行うことも大切だと考えます。

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